歴史の黒部下の廊下(旧日電歩道と水平歩道)

2021年10月9日(土)~11日(月)

参加者10人

行動記録

10月8日 曇り

新宿22:20→中央道安曇野インター経由→2:30信濃大町駅前仮眠▲

10月9日 晴れ

信濃大町駅▲5:00→タクシー→5:30扇沢6:30→6:45黒部ダム6:50→内蔵助谷出合→白竜侠→十字侠→S字侠→仙人谷ダム→15:50阿曽原温泉▲

10月10日晴れ

阿曽原温泉▲4:25→折尾谷→志合谷→9:50欅平10:43→黒部峡谷トロッコ列車→11:10宇奈月温泉→富山地方鉄道→新魚津→あいの風富山鉄道→泊→日本海ひすい鉄道→糸魚川→大糸線南小谷経由→17:10信濃大町→大町温泉経由→20:00道の駅▲

10月11日晴れ

 道の駅▲4:30→安曇野インター経由→9:30新宿

10/8

新宿を22:20に出発し深夜2:30分に信濃大町駅前に到着。駅前のタクシー会社に寄り5:00にタクシー3台を扇沢迄行くように依頼しタクシー会社の駐車場で仮眠をする。

10/9

信濃大町5:00にタクシーで扇沢に向かう。30分程で到着。臨時の6:30分発の電気バス(旧トロリーバス)に乗る。15分程で黒部ダム駅に到着し屋外に出る。晴れている。予想では終日曇りの予報。

今回も山の女神は微笑んでくれた。支度をして7:00少し前に内蔵助出合に向かう。ダム底まで降り、放水のダムを見上げながら黒部川を渡る。

7年の歳月を掛け171人の人柱の上に成り立って延べ1000万人の人がかかわって出来上がった黒部ダム(通称黒部第4ダム)を目の前で見ながらこれから下降する黒部の源流【下の廊下】、黒部ダムから薬師沢小屋迄の上流を【上の廊下】、そして薬師沢小屋から雲の平手前の黒部川水源地標までを【奥の廊下】と言い、思い出がある。ダムの底を渡り、左岸通しに下っていく。

しばらく登山道を下って行くと内蔵助谷出合に到着。左の登山道を登って行くと左手に丸山の東壁を仰ぎながら内蔵助平経由でハシゴ段乗越を通り真砂沢に行ける。過去に池の平小屋からの裏剣を見に歩いた素晴らしいルートである。そんな思い出を頭に描きながら黒部源流左岸を一歩一歩踏み固める。

足裏に感じる地面から振動が「ようこそ黒部の山に来てくれました」と声を掛けられている。「急いで歩かない黒部の風を感じ取る。この道を切り開いてくれて人達に感謝をしなさい」と山の神がほほ笑んで声を掛けて来る。

内蔵助谷出合を通過すると本格的な切り立った水平歩道に入る。関西電力の管理用の転落防止用ワイヤーを握りながら、場所によっては50㌢幅位しかない歩道を慎重に進む。

谷底迄100m近く落ち込んでいる場所もある。丸太を数本渡しただけの参道も多数出て来る。毎年転落事故が発生しており2年前には1週間で4人登山者が転落して亡くなっている。気の抜けない場所が続く。

黒部川のエメラルドグリーンの急流に目を取られながら、峡谷と言われる岩壁が対岸に見られ、飽きる事が無い。

一方で【黒部に怪我は無い】と言われるように転落したら、急流に吸い込まれてしまう。そんな緊張感が続く。天気に恵まれ岩も山道も乾いているので気持ちは落ち着いて歩ける。

しばらく進むと黒部別山谷の先にある大へツリに到着。遅くまで雪渓が残り、高巻の為に20mの木製の簡易階段が作られている。濡れていると丸木だから滑りそう。登って下って高巻を終えて暫く進むと白竜峡に到着。

両岸が狭まり水流が岩に勢いよくぶつかり、白い水しぶきを上げている。本当に飽きの来ない登山道である。時間を掛けてゆっくり歩くことの意味が此処にある。特に次に天気が良い補償は無いので運が良い。

後から速足の登山者に道を譲り景色を堪能する。しばらくすると中間点より少し後半になる十字侠のつり橋に到着。黒部川に剣沢と棒小屋沢か交わる素晴らしい峡谷である。十字に交差しており、剣沢の奥の方には幻の剣沢大滝がある。

人の目には会えない【幻】の語源である。大滝まで数日掛けて登攀していくルートである。そんな場所がこの日本の黒部にあることが素晴らしいと感じる。

十字侠を後にして暫く登山道を登り、1時間程で下降に入る。黒部川第4発電所の送電線出口が2つ見える。此処から道は平坦になりS字侠になる。ここから一気に90m位登山道を急下降すれば仙人谷ダムに到着し、黒部の下の廊下部分は終了し、人工物である建物が目の前にある。

広い芝地で休憩し、少し歩くとダムの堰堤になり渡りきると、敷地内に入りドアを開けると建物の中が通路になっている。トロッコのレールが敷かれている。ダムを管理する作業員運搬用のトロッコ列車の軌道を横切る。

通路の中は地下の温熱で敷地内は暖かい。建物の通路を終えると、最後の阿曽原温泉への登りが30分。8時間近く踏破しており、夜行の寝不足が身体がミシミシして来る。途中で山をトラバースきみに回り込むと一気に下り20分程で阿曽原温泉の小屋が見える。

皆の歓喜が響く。夕方15:50に到着し、一日の行動が終わる。テント場はびっしりと埋まっている。どうにか2つ張れる所を見つけ、設営後、女性陣の温泉時間なので、女性が先行する。男性陣はビールで1時間親睦する。

5時から男性時間になったので女性陣と入れ替えで露天風呂に入る。すぐに湯舟が一杯になる。湯舟横のトンネルが天然のサウナ。此処は吉村昭の高熱隧道の小説の場所。

仙人ダムを建設する際の資材運搬路を作るときに此処の場所が160度の高熱が岩盤から噴出し、火傷で死亡者が出る。他に雪崩や転落で300名が亡くなる難工事となる。トンネル貫通に取り掛かった大自然との闘いが昭和15年に起こっていた。

今の様に対策なども無く、冷たい地下水を被りながらの工事に逃げ出す作業員と、現場監督との緊張する人間ドラマ。

そして過酷な冬の黒部の環境で雪崩で宿舎が吹き飛ばされたり、地下の灼熱でダイナマイトが自然発火して多数の死亡者が出るなど、戦争時代の背景で作業員が水平道から谷に落ちる等、小説を読んでいても読者に涙を誘うノンフィクションの世界があった。

よく夜中にテント場に霊が漂うと聞いて、緊張して初めて訪れた時は寝られなかったのを思い出す。そんな場所の中で満天の星の中を静かにとばりが降りて眠りに入る。

10/10

朝4:25阿曽原温泉をスタート。1時間程ヘッドランプの中で登りが続く。白みかかるころ水平歩道に入る。昨日ほどでは無いが峡谷が続く。現在で関西電力が黒部ダムを作る際に環境省より下の廊下及び水平歩道(旧日電歩道) を整備するという事で契約し登山者が安心して通れるようになった。

関西電力の前までは日本電力の会社が水力発電所を作る際の調査道として水平歩道を管理し整備していた。歩いて判るがダイナマイトで岩を破壊しながら50㌢幅の作業道を高さ90mぐらいの所によく作ったと驚かされる。

当時は戦争を背景にした電力需要に応じる為の国策に歴史を感じる。折尾谷・志合谷を通過し、昨日ほどの緊張感も無く、楽しく黒部の源流を下っていく。相変わらず速足でソロが抜いていく。

「お先にどうぞ」と譲りながら転落しない程度に景色を堪能しながら旧日電歩道の水平歩道を進む。相変わらず黒部川からの標高は90m近く。下を覗き込むと尻込みをする。どうしても水平道を作った作業員の死闘が頭に描き出される。歩くこと5時間で水平道から別れて登山道になる。

下の方からトロッコ列車の汽笛が聞こえてくる。黒部の源流の山旅の終了が近くなってきた事を感じる。11:10に欅平の駅舎が見え、観光客を見て一安心する。歴史の沢山詰まった人柱の上に作られた、黒部ダム・下の廊下管理歩道・仙人谷ダム・欅平にある黒部第3ダム。

壮絶な自然と人間との戦いの裏に人間ドラマが描かれ【山は男女の差・貧富の差・体力の強弱を選ばない】平等の中に存在する自然の神である所以である。ゆっくりと歩き山に伝わる背景などを知識に持って登ると更に味わいのある山旅が出来る。トロッコ列車に乗り1時間15分の黒部峡谷の列車の旅に入る。

風は秋風。防寒具を羽織、右に左に峡谷を走り抜ける。歩き続けた2日間に快い振動とは言えない急カーブでの車輪とレールのきしむ音に睡魔が消される。黒部川の流れが穏やかになり宇奈月温泉が近くなったと感じる頃トロッコ列車は宇奈月温泉駅に入る。改札を出て直ぐに富山地方鉄道に乗り換える。

待ち合わせ時間が殆ど無く昼食が食べられずに新魚津に向かう。40分程で新魚津に到着。第3セクターのあいの風富山鉄道への乗り換えが5分。走るように乗り換えホームに向かう。改札迄来ると残り1分ほど。

乗車券を購入している時間がない。駅員の配慮で車内で購入するように票をもらい、ホームを走り列車に乗リ込む。黒部の山の中ではのんびり歩こうと行動していたが、街に戻ると慌ただしい時間との競走。

分刻みとの生活をマジマジと感じる。山の癒しの時間の贅沢を感じるひと時である。泊駅で乗り換え、日本海ひすい鉄道に乗り換え糸魚川に向かう。日本海を見ながらの鉄道の旅。贅沢な至福の時間である。そして糸魚川に到着する。ここから大糸線に乗り換え。45分の待ち合わせ時間。昼食に街に出るが人気が無い。

町を歩いたが簡単に昼食を提供する店が無い。これが俗にいうシャッターの町である。過疎が進む地方の現実なのか。駅に戻りコンビニで昼食を。社会見学の時間を過ごした。ホームで食事を摂り、列車に乗り込み南小谷駅で乗り換え、信濃大町に向かう。白馬駅あたりから登山者が増え、夕方5時過ぎに大町駅に到着。

半日かけての列車の旅を終えた。なかなか経験できない旅である。タクシー会社に寄り荷物を整理して車に乗り大町温泉の薬師の湯に入る。入浴後、道の駅に向かい食事を摂り一晩を過ごす。

10/11

早朝4時過ぎに起き、安曇野インターから高速に乗り、途中のサービスエリアで朝食を摂り一路新宿に向かう。混むことも無く順調に八王子インターまで向かう。其処から事故渋滞にはまり、一般道に出て新宿に向かい、9:30に新宿に到着し解散する。

記録 Y・F

 



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